日本近代史と戦争を研究する
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中国の歴史教科書
中国の歴史教科書について、
あやふやな情報に基づいて議論するのではなく、
冷静に実態を見定める必要があると思います。

以下では、中国の歴史教育の一端を
並木頼寿「中国教科書の世界・日本像」(山内昌之・古田元夫編『日本イメージの交錯』東京大学出版会、1997年)によってみていきたいと思います。
(1)教育の方針

国家教育委員会が制定した『全日制中学 歴史教学大綱』(1991年)には、
次のようにあります。


「中学の歴史教学は、学生に対して、社会発展法則の教育、革命伝統の教育、愛国主義教育、四つの基本原則堅持の教育、および国際主義教育を行って、学生が社会主義祖国を熱愛し、社会主義事業を熱愛し、共産党を熱愛する真摯な感情を育て、歴史上の優秀な人物の尊い人格に学び、社会主義現代化建設のために貢献する精神を樹立することが求められる」
(並木論文、45-46頁)


並木氏が指摘するように、
「中国の歴史教育には、中国共産党が指導する中華人民共和国という国家に国民を統合させようとする、たいへん強い意志が働いて」います(同47頁)。

そこでは、マルクス主義の発展段階論が歴史観のベースとなります。


○初級中学『世界歴史』1992年 巻頭「なぜ世界歴史を学ぶか」

「私たちは世界歴史を学ぶことによって、歴史唯物主義の正しさ、たとえば社会発展法則の正しさをいっそう良く身につけることができる。私たちは歴史の発展に確固とした法則があること、後の社会には前の社会よりも進歩していること、資本主義社会が必然的に社会主義社会にとってかわられることは、社会発展法則によって決定されていることを、より明確に理解することができる。未来の世界が発展していく基本的な方向は、あともどりすることのないものなのである。これによって、私たちの社会主義に対する信念はいっそう強化されるであろう。
 中国歴史を学ぶことによって、私たちは愛国主義の尊さを深く教えられるが、では、世界歴史の学習からも同様の教訓を学ぶことができるだろうか。やはり学ぶことができる。…」(同50-51頁)



(2)時代区分

初級中学『世界歴史』では、
「世界古代史」、「世界近代史」、「世界現代史」
と時代区分されています。

「中世」がないのは、「封建社会」を古代とすることに由来しています。
中国史では、戦国時代(前403-前221)から「封建制」になったとみられており、
その発展段階規定と関連しているわけです。

地主制を基礎とする封建制は、20世紀の中国革命で打倒されるまで続きます。
その後は、植民地主義と結託した封建勢力が民国の政権を牛耳ったとされ、
中国近代の社会体制は、「半封建」と規定されています。

近代から現代への大きな画期は、ロシア革命に置かれますが、
1949年の共和国成立から現代とする見解もあり、
その評価は揺れているようです。



(3)日本との関わりについて

以上のような時代区分を背景に、
日本との関係は以下のような主旨で記述されています。

中国の古代文明は世界歴史を牽引する先端的文明であり、
世界に絶大な貢献を果したとされます。
しかしアヘン戦争を境に立場が逆転します。

近代アジアの歴史は、欧米植民地主義の圧迫に対抗する
民族解放運動の歴史として描かれていきます。
そして、その中で中国は、
「反帝国主義・反封建」の課題を担う世界の革命的な人民の
先頭に立っていたことが印象づけられる記述となっています。

アジアのなかで著しく異質な存在として、
「帝国主義化」した日本がとらえれています。
「主な帝国主義国家―日本」の項には、次のようにあります。


「大地主と大ブルジョアを代表する天皇専制政権は、極力軍国主義の発展につとめ、内には弾圧政策を行い、外には侵略拡張を行った。日本の侵略の矛先は朝鮮と中国に向けられた。早くも七〇年代に、日本は朝鮮に迫って門戸を開かせ、その侵略勢力を浸透させようとした。一八九四年にはさらに朝鮮への侵略を進めるため、中日甲午戦争〔日清戦争を指す〕を挑発した。ツァーロシアと朝鮮および中国の東北地方を争奪して、一九〇四年、日本は日露戦争を起こした。日本は帝国主義にむかう過渡的な過程において、一面では従来西洋の資本主義国家と結んでいた不平等条約を徐々に廃棄して、西洋に従属させられる危険から脱却するとともに、別の一面では自らすすんでみだりに武力を好む侵略的な傾向の強い帝国主義国家に変わっていった。」(同62頁)


近代以前の日本については、
中国から絶大な影響を受けて社会と国家を形成したこと、
そして「倭寇」の侵略的イメージが主になるのでしょう。

古代の対外関係においては、
中国の大王朝による朝鮮や東南アジアに対する遠征や征服は、
あまり触れられていません。「元寇」についてもありません。
また中国を中心とした冊封・朝貢関係をもとにした地域秩序についても
記述されていません。

近代になると、日清戦争から日中戦争に至る日本の軍事行動の広がり、
および中国の抵抗運動に関して、日本の教科書の記述をはるかに超える情報が
盛り込まれています。


【関連書籍】

わかりやすい中国の歴史―中国小学校社会教科書 世界の教科書シリーズ

入門 中国の歴史―中国中学校歴史教科書 世界の教科書シリーズ

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中村 哲 『東アジアの歴史教科書はどう書かれているか―日・中・韓・台の歴史教科書の比較から』
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